サポートプランをはじめます

サポートメンバー向けプラン(月額500円)をはじめます。フリーランスライターの市場状況や、生成AIによる需要の変化、「読む」ことの政治性についても、少し語っておきます。
岡田麻沙 2026.03.02
誰でも

サポートメンバー向けのプラン(月額500円)をはじめます。月に1〜2本、サポートメンバー限定の記事を出す予定です。

無料の記事では論文紹介やプロダクト分析が中心ですが、有料のほうには、もう少し私自身の思想を書き込んだものが入ってくるかもしれません。

有料にする理由を書いておきます。

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後進のライターのこと

フリーランス協会「フリーランス白書2024」によると、Webライターを含む「クリエイティブ・Web・フォト系」フリーランスの52%が年収400万円未満です[1]。ボリュームゾーンは200〜400万円。

そこに生成AIが来ました。2025年のある論文によれば、ChatGPT登場後、フリーランス市場においてライティングや翻訳など代替可能な領域の需要が20〜50%減少しました[2]。theLetterが2025年11月に開催したイベント「原稿料崩壊時代、『書く』で生きるは続けられるのか?」には300名以上の申し込みがありました[3]。タイトルが現状を物語っています。

中堅どころの書き手が無料で記事を提供し続けると、専門的な記事の相場が「タダ」に寄っていきます。それは自分より若いライターの仕事を削ることになる。

米国ではすでにその帰結が見えています。米国の非営利調査機関Pew Research Centerの分析によれば、米国の新聞社の報道部門の雇用は2008年から2019年の間に51%減少しました。約71,000人から約35,000人へ[4]。地方紙が消え、「ニュース砂漠」が広がっている。米国の労働問題ジャーナリストで、地方紙再建を掲げるRebuild Local Newsの共同創設者ハミルトン・ノーランはこう書いています。「私のSubstackは生活を支えてくれている。しかし、前の職場にいた100人の記者を支えることはできない」[5]。

個人の有料ニュースレターが成立することと、ジャーナリズムの生態系が成立することは別の話です。ノーランの結論はこうです。「ジャーナリズムに公的資金が入らない限り、この職業は衰退し続ける」[5]。月額500円のニュースレターと公的資金の話はスケールがまるで違います。でも根っこにある問いは同じだと思う。言葉に対して、社会はどれだけの対価を払う用意があるのか。書き手が自分の書いたものに値段をつけることには、小さいけれど意味がある。

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読むという行為について

ペンシルバニア大学のメディア政策研究者ヴィクター・ピカードとティモシー・ネフは33カ国を分析し、公共メディアへの資金投入が手厚い国ほど民主主義が健全であることを示しました[6]。米国の公共メディアへの公的支出は国民1人あたり約3ドル。ノルウェーは110ドル、ドイツは142ドル、英国は81ドルです[7]。ピカードは「ジャーナリズムを、市場における収益性でその価値が決まる商品としてではなく、公共サービスとして考えるべきだ」と述べています[8]。

報道の現場が縮小した地域では投票率が下がり、政治的競争が減少し、腐敗が増えることが研究で確認されています[9]。情報にアクセスできるかどうかは、その人の判断を変え、行動を変え、結果として社会を変える。読むことは、静かだけれど政治的な行為です。

お金を払って記事を読むという行為そのものが、その人のその後の時間を少しだけ変容させることがある。何かを選んで、対価を払って、読む。その一連の動作が持つ重みは、たぶん尊いものです。

***

ひとつだけ正直に書いておくと、私はとてつもなく飽きっぽい人間です。突然更新が止まる可能性は、ゼロではありません。思っていたのと違った、と感じたら遠慮なく課金を止めてください。私のほうも、もし続けられなくなったら早めにお知らせを出します。

みんなで、無理をすることなく、生きていきましょう。

***

脚注

[1]フリーランス協会「フリーランス白書2024」。Webライターを含む「クリエイティブ・Web・フォト系」フリーランスの年収分布。https://blog.freelance-jp.org/wp-content/uploads/2024/03/FreelanceSurvey2024.pdf

[2]Teutloff, O. et al. (2025). "Winners and losers of generative AI: Early Evidence of Shifts in Freelancer Demand." Journal of Economic Behavior & Organization, 235, 106845. https://doi.org/10.1016/j.jebo.2024.106845

[3]theLetter公式ニュースレター「どうなるAI時代の原稿料!『書く』で生きるは続けられるのか?」2025年12月10日。https://news.theletter.jp/posts/4d9ab640-d012-11f0-8382-8ba46af9224f

[4]Pew Research Center, "10 charts about America's newsrooms," April 28, 2020. https://www.pewresearch.org/short-reads/2020/04/28/10-charts-about-americas-newsrooms/

[5]Hamilton Nolan, "Journalism Needs Government Funding to Survive," Columbia Journalism Review. https://www.cjr.org/analysis/journalism-needs-government-funding-to-survive.php

[6]Timothy Neff & Victor Pickard (2022), "Funding Democracy: Public Media and Democratic Health in 33 Countries," The International Journal of Press/Politics.https://www.publicmediaalliance.org/publications/funding-democracy-public-media-and-democratic-health-in-33-countries/

[7]Victor Pickard & Timothy Neff, "Strengthen our democracy by funding public media," Columbia Journalism Review. https://www.cjr.org/opinion/public-funding-media-democracy.php

[8]Columbia Journalism Review, "US News Industry Faces Bleak Start to 2024." https://www.cjr.org/tow_center/us-news-industry-faces-bleak-start-to-2024.php

[9]Democracy Fund, "How We Know Journalism is Good for Democracy." https://democracyfund.org/idea/how-we-know-journalism-is-good-for-democracy/

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